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かもんぎょくへき
渦紋玉璧

直径13.8㎝

前漢時代


中国の特産品として知られる玉(ぎょく)は、ヒスイの一種で、主に軟玉を指します。鉄などの金属化合物の配合によって白・緑・赤など様々な色をなします。岩石の一部として自然界に存在しますが、あくまで硬玉に対しての「軟」玉で、相当な硬度があるため、大型かつ平滑な玉材を得るのは容易ではありません。加工にはダイヤモンドや鋼鉄でできた工具が必要で、刀子状の工具で切るのではなく、石英などの粒子をつけ、回転運動によってすり減らします。


内外にめぐる渦巻き模様にもはみ出した線や二重・三重の線が認められ、工具の刃を様々な方向からくり返しあてた痕と考えられます。また、渦巻き部分は立体的になっています。かなりの労力を費やしてつくられていますが、璧にはどのような役割が期待されていたのでしょうか?


『周礼』では、璧は子や男の爵位にある貴族が天子に見える際に身につけたとされ、漢代の上等なお墓では被葬者の身辺や棺の外に置かれています。『漢書』には、冬至の日に「日月が璧を合わせるが如く」ぴたりと重なるという記述が見られ、丸い形と中央の丸いくりぬきが太陽と月、無数の渦巻きが天に満ちる気を象徴すると考えられたようです。また、後漢時代の画像石では伏羲・女媧や龍・虎の間に璧が描かれており、陰陽和合の象徴としても扱われていたことがわかります。


璧は、たんなる特権階級のシンボルやお守りとしてだけでなく、その象徴性に重要な意味をもっていたようです。

(石谷)


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