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「永徽元年」方格規矩四神鏡(伝河南省洛陽出土)

面径18.5㎝ 唐代(650年)
 
鏡縁の斜め十字の位置に、「永」「徽」「元」「年」と一字ずつ入れます。このように年代を記した鏡を紀年鏡と呼び、製作時期をピンポイントで示すことから、研究ではたいへん重視されています。永徽元年は西暦650年にあたり、唐代でも早い時期にあたります。また、銘帯には「光流素月 質稟玄精 澄空鑒水 照迴凝清 終古永固 瑩此心霊」とあります。

漢代の方格規矩四神鏡は、円形の鏡で「天」を、正方形の方格で「地」をあらわし、「天円地方」思想を反映しています。規矩紋と呼ばれるT・L・V字状の紋様は天地をつなぐ装置といわれています。内区に配された青龍・白虎・朱雀・玄武の四神が東西南北を司ることは、ご存じの方も多いでしょう。

本鏡ではT・Lが欠ける代わりに、方格の四隅や四神の周りに扇状のパルメットをおきます。これはヨーロッパや中央アジアに由来する紋様で、中国では隋唐代にたいへん流行しました。

銘文は「精(セイ・jing)」「清(セイ・qing)」「霊(レイ・ling)」と韻を踏みながら、鏡の品質や効能を誇る詩を詠んでいます。漢代に使われた篆書風の書体ですが、対句を基本とする駢儷体(べんれいたい)といった新しい形式に変わっています。

本鏡は漢代以来の伝統である方格規矩四神紋を継承しつつ、隋唐代の流行も兼ね備えており、新旧の要素が共存する作品といえるでしょう。
(馬渕)
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