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短刀 無銘(名物 伏見貞宗) 


刃長30.2㎝ 重177g
鎌倉時代(14世紀) 国宝

やや刀身の幅が広い短刀で、不動明王と毘沙門天を示す種字(梵字)、爪付きの剣、腰樋(刀身の腰部の溝)を表裏に彫ります。

くっきりとしたほそめの刃にはリズムよく尖った互の目がまじり、硬さの異なる組織がこまかな粒状にみえる“沸”(にえ)がつき、粒子が線状にあらわれた“砂流”や“金筋”がかかります。

きっさきのあたりで柾目状にながれ、たなびく雲のように美しい地鉄が見どころでしょう。

刀工による銘はありませんが、本阿弥家によって正宗の門人ともいわれる相模国の刀工・貞宗の作と極められ、茎(なかご)にはうっすらと「貞宗」「本阿(花押)」の朱銘が残っています。

ともに伝わる「蔵帳写」によれば、もとは伏見城にあり、豊臣秀吉の家臣で「賤ケ岳七本槍」のひとりとして知られる加藤嘉明が加賀爪甲斐守(直澄)から入手したと伝えられます。

しかし、嘉明の没年が寛永8年(1631)、直澄が加賀爪家の家督を継承したのが同18年であるため時期が合わず、この伝承には疑問が残ります。

加藤家伝来の名物「大島行光」は寛永19年に嘉明の嫡男明成が加賀爪直澄から購入したと伝えられており、「伏見貞宗」の入手経路はこれと混乱したとも考えられます。

徳川家の三つ葵紋と「貞宗」の文字が刺繍された刀袋が付属しており、徳川家の所有であった時期があったのか、はたまた何らかの機会に刀袋が下賜されたのか、興味は尽きません。
(川見)
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