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葡萄唐草文軒平瓦

幅27.1cm
飛鳥時代(7世紀末~8世紀初頭)

奈良県明日香村岡寺(龍蓋寺)出土と伝わる軒平瓦です。

岡寺は、義淵僧正が草壁皇子に岡宮の土地を賜って建てたといわれる寺院で、『東大寺要録』『扶桑略記』などに寺名を確認できますが、いずれも後世の記録で詳細は分かっていません。現在の岡寺の西隣にある治田神社境内から古瓦が発掘されていることから、当初の伽藍はこの付近にあったと考えられています。
類例の少ない天人文・朱雀文塼が出土したことでも知られています(京都国立博物館保管・重要文化財)。

本品は上段に粗い鋸歯文、下段に葡萄唐草文を配しています。葡萄唐草文は中心から左右対称に蔓が展開し、それぞれ3つの房を配し、両端のみ蕾を表現しています。
葡萄唐草文は中央アジアに起源をもち、隋唐代に流行し日本へ伝わりました。ほとんどの瓦当はパルメット(棗椰子・忍冬)の唐草文を採用し、葡萄文は非常に珍しいです。
房の粒は小さな珠点で表され、蔓も力のない曲線の繰り返しになっており、明日香村高松塚古墳出土の海獣葡萄鏡などと比較すると形骸化が進んでいます。

外区に粗い鋸歯文をあしらった5葉の蓮華文軒丸瓦(写真2枚目右の軒丸瓦は伝奈良県桜井市青木廃寺出土)と組み合い、岡寺式軒瓦と呼ばれています。この型式の軒瓦は、奈良盆地南部の山間に位置する寺院跡から多く出土しています。
(馬渕)

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