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ちんかつ      しろおうむ
陳栝(等)   白鸚鵡図


縦129.0cm 横31.5cm
明中期(16世紀前半)

白い鸚鵡(オウム)が茘枝(ライチ)の枝に止まっており、上部に唐の王維「白鸚鵡賦」が題されています。題を書いたのは明中期蘇州の文人、陳淳です。末尾の記載によると、張子(淳の甥または外孫の張元挙か)が鸚鵡を、陳栝(淳の子)が茘枝を描いたといい、陳淳一家の合作であることがわかります。

鸚鵡は墨線でかたどった上に鉛白を塗り、羽毛に包まれた体を柔らかく描き出します。爪や嘴など硬質な箇所は、細く勢いのある濃墨線によって鋭利な質感を表します。張元挙は花鳥画家として文献に名が残りますが、現存作は少なく、貴重な作例と言えるでしょう。

茘枝の枝は淡彩で濃淡をつけ、立体感をもって描きます。果実は大小や向き、赤と緑の比率、種子の量など一つ一つ変化をつけます。葉は没骨の淡い色面の上に、強弱のある短い線で葉脈を加えます。陳栝はこうした淡彩花鳥画の名手でした。

題は北宋の米芾を意識した行書で、潤いをもって一気呵成に書かれます。行間の不揃いな構成や極端に誇張された長画に、師の文徴明と異なり奔放な表現を得意とした陳淳の個性が表れています。

白鸚鵡と茘枝はともに嶺南地方の特産です。唐代の楊貴妃は好んで茘枝を取り寄せ、白鸚鵡「雪衣娘」を愛玩したことが知られています。王維「白鸚鵡賦」も、僻遠の地から運ばれ貴人に飼いならされた不自由な鸚鵡に共感する内容です。本作の鸚鵡は故郷の茘枝にとまった本来の姿で描かれており、そこには仕官せず老荘の学に心を寄せた陳淳の理想が反映されていたのかもしれません。
(飛田)
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