「甘露五年」獣首鏡

「甘露五年」獣首鏡


面径16.7cm 

三国時代(魏・260年)


中央に配した菱形により鏡背を4区画し、各区にたてがみのような表現をもつ獣の顔を表した「獣首鏡」です。
銘文に紋様の説明はありませんが、獣の顔は扉の鋪首(ほしゅ)や、屋根の軒先を飾る瓦当紋様にあしらうなど、外からやってくる悪霊を退ける辟邪(へきじゃ)の効能が期待されたと推測できます。

獣首鏡は2世紀後半の後漢代に、現在の四川省で盛んに作られました。しかし、本品の銘文には「甘露五年、二月四日、右尚方師作竟、清且明、君冝高官、位至三公、保冝子孫。」とあり、魏の甘露五年(260)に官営工房である右尚方によって製作されたことがわかります。
魏では獣首鏡や方格規矩四神鏡など、後漢代の鏡を模倣生産していました。

本品の同型鏡を台東区立書道博物館が所蔵しており、五島美術館所蔵の「甘露四年」獣首鏡、河北省で収集された「五年二月四日」獣首鏡も紋様・銘文が酷似しています。そのため、260年前後に魏の工房によって複数の獣首鏡が製作されていたと考えられます。

魏の年号を記した数少ない製品の1つと位置づけられ、長方形の鈕孔、波打つような強い研磨痕、鏡背を横断する笵傷なども魏鏡の特徴とみることができます。
魏鏡説のある三角縁神獣鏡との比較にもしばしば参照され、古墳時代を研究するうえでも重要な資料と言えるでしょう。

(馬渕)

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